注釈
【1】
本項目では、宮古の地元紙「宮古新報」「宮古毎日」各紙の報道を整理し、加えて「琉球新報」「沖縄タイムス」各宮古支局の発表内容も参考にした。関係者のヒアリングも文書や電話、Faxを通じて行い、その中には那覇での所用時に研究室まで立ち寄られた方もいる。御礼申し上げたいと思う。
【2】
(1)琉球王朝時代の海面利用については、下記の資料にまとめてある。

上田不二夫「第3部 漁業制度 第1節 王府時代の海面利用関係」『沖縄県農林水産行政史 第8・9巻 水産業編』農林統計協会、平成2年、241〜247ページ

(2)海は「公共用物」であるということについて、最高裁の判例は海の法的性質を次のように述べている。
「海は古来より自然のままで一般公衆の共同使用に供されてきたところのいわゆる公共用物である」、そして<海は公共用物である>から、「国の直接の公法的支配管理に服し、特定人による排他的支配の許されないもの」

(下線引用部は、最高裁昭和61年12月16日「田原湾干潟訴訟」上告審判決)

したがって、「特定人による排他的支配の許されないもの」であるからこそ、「漁業権」も「公有水面埋立権」も水面を支配し、管理する権利ではないということになる。


【3】
漁業法導入時の経緯については、下記の資料を参照のこと。

(1)上田不二夫「第3部 漁業制度 第2節 漁業法の導入と沿海村落、第3節 県漁業取締規則の制定と特色」『沖縄県農林水産行政史 第8・9巻水産業編』農林統計協会、平成2年、247 255ページ
(2)上田不二夫「第2節 漁労 1.近世沖縄の漁場制度と浦添」『浦添市史第4巻 資料編3、浦添の民俗』、浦添市教育委員会、1983年、89〜98ページ全国的な漁業制度の展開については、下記資料を参照のこと。
(3)二野瓶徳夫「第4章 明治漁業制度の展開」『明治漁業開拓史』平凡社 、平凡選書70、1981、247〜331ページ


【4】
カツオ漁業と漁業法の関係については、専業漁業者である糸満漁夫との関係で比較するのが良いと思う。下記資料を参照。

上田不二夫「歴史の中の糸満漁民 鰹漁業の振興と漁業法改正」新沖縄文学、No83、沖縄タイムス社、1990、44〜48ページ


【5】
戦後の漁業権制度の特色や、沖縄へ導入された経緯については、下記資料を参照のこと。

(1)森田真弘「沖縄の立法  漁業法物語」『水産人 森田真弘著作集』仝編集委員会、昭和63年、49〜55ページ
(2)大工義紀「第3章 琉球政府期 第1節〜漁業法の制定と背景」『沖縄県農林水産行政史 第8・9巻 水産業編』農林統計協会、平成2年、260〜264ページ
(3)上田不二夫「南の海の環境保全と水産業、漁業権は本土並みか?」『日本文化を考える』編著 宮良高弘、第一書房、1993、209〜223ページ
(4)上田不二夫「海浜リゾート開発と漁業権(3)琉球漁業法の制定と漁業権」『転機に立つ日本水産業』 西日本漁業経済学会、319〜327ページ
(5)金田禎之「第1章 制度の歴史  現行の漁業制度」『漁業法のここが知りたい』 成山堂書店、平成7年、11〜15ページ


【6】
オバーや村のウミンチューの権利については、八重山白保に於ける「海上空港」建設をめぐる論議に関連して、多くみられた。

(1)「漁民33人が提訴、漁業権の確認求め」沖縄タイムス昭和59年3月10日付け
(2)土田武信「ウミンチュの人権擁護を」沖縄タイムス論壇、昭和63年8月21日付け
(3)多辺田政弘著『コモンズの経済学』「7.イノーの経済学へ」学陽書房、1990年、242〜262ページ


【7】
「漁業法」の中心をなすテーマが「漁業権」ではあるが、漁業という一般に馴染みのない分野の法律問題ということもあって、参考書も限られている。「漁業権」そのものを、法律制度そのものの理解というよりは、漁業法を総合的に考え、分かりやすく記述されている内容から、下記の文献を紹介したいと考える。

 浜本幸生 監修・著『海の守り人論、徹底検証 漁業権と地先権』まな出版企画、平成8年


【8】
漁業権侵害については、現行の「新漁業法」成立時の見解をまとめてあるものと、それを下に現時点での解釈を整理したものを2点をあげておく。

(1)水産庁編『漁業制度の改革』、日本経済新聞社、昭和25年
(2)浜本幸生 監修・著『海の守り人論、徹底検証 漁業権と地先権』まな出版企画、平成8年


【9】
正式な文書名と関連する事項のみを、下記に整理しておきたい。

(1)文書番号・日付:7水振第1514号・平成7年7月20日水産庁長官発、沖縄県知事宛
(2)文書名:「今後の漁業と海洋性レクリェーションとの共存に向けて----円滑な海面利用の推進のために----」
(3)文書内容(抄録):漁場として伝統的に使用されてきたという歴史的経緯があるわが国沿岸海域において、漁業と海洋性レクリェーションとの間で海面利用をめぐる競合が 生じ、このまま放置すれば、今後、このような競合がますます著しくなっていくことが予想されており、漁業と海洋性レクリェーションとの海面利用の調整とトラブルの未然防止が緊急の課題となっている。水産庁としては、こうした課題に対応するため、「海面利用協議会等の設置について」(平成6年7月11日付け6水振第1583号水産庁長官通達)をもって、漁業関係者と海洋性レクリェーション関係者との話し合いの場として、海面利用協議会体制を整備したところであるが、……今般、海面利用中央協議会における意見を踏まえ、調和的な海面利用を推進するための理念として下記のとおり取りまとめたので・・・

なお、このことについて、貴管下、関係団体等へ周知徹底を図られたい。

1海の調和的利用と環境保全の必要性

(1)海洋性レクリェーションを楽しむ場としての海の利用についての需要が高まっている。
(2)海についても、自然環境の保全に対する国民の関心が高まっている。
(3)このため、漁業関係者及び海洋性レクリェーション関係者においても、海の調和的利用と環境保全の必要性について、十分な認識を持つことが求められている。

2漁業関係者と海洋性レクリェーション関係者との相互理解の促進

(1)海洋性レクリェーション関係者は、
 [1]沿岸漁業が重要な位置付けにあること、
 [2]漁業が地域の基幹産業になっていること、
 [3]沿岸海域は、漁場として伝統的に利用されていること、
 [4]漁業関係者が……自然環境の維持・保全及び・・救助活動に重要な役割等に対する認識を深めることが必要である。さらに、海洋性レクリェーション関係者は、伝統的な利用を尊重しつつ、海面利用秩序の形成を図ることが重要・・認識する必要がある。
(2)漁業関係者は、漁業以外の利用の必要性が生じていることを的確に認識することが必要。海洋性レクリェーションの導入が、漁村の振興を図る手段。
(3)我が国沿岸海域を両者が共存して利用していく必要性について共通の意識を醸成する

3調和的な海面利用を図るための話合いとルールづくりの促進

(1)略 (2)略 (3)略 (4)地方公共団体等が、両者を調整・指導をしていくこと

4調和的な海面利用秩序の定着化の促進

(1)ルール・取決め等が、地域のルールとして定着する
(2)ルール・取決め等が……当事者以外……広く周知徹底され、
(3)ルール等を一般の海面利用者に広報・普及すること地方公共団体等積極的に取り組むこと

5調和的な海面利用を促進するための環境の整備

(1)海面利用者のモラルとマナーの向上が必要教育・指導
(2)漁業関係者と海洋性レクリェーション関係者共通的な課題について、
(3)海洋性レクリェーション関連施設の整備に積極的に対応

6まとめ

(1)相手方の海面の利用について、相互に理解し尊重する精神を有すること
(2)ルールづくりを進める取決めを遵守し、有効に機能させるための諸活動
(3)地方公共団体等側面的な支援、当事者以外啓発・普及等について重要な役割
(4)ルールの遵守やマナーの向上そのための啓蒙・教育及び組織化の促進等に努める


【10】
漁協とダイビング事業組合の主張については、両者の交渉経過を記録した「協議会記録」や新聞記事の内容等を整理、まとめた。
【11】
他府県、他地域の事例については、下記の資料を下に整理した。

(1)全国漁業協同組合連合会『海洋性レクリェーションタイプ別対策指針作成事業 現地調査報告書』平成5年3月
(2)田中克哲「ダイビングスポット開設と利用料徴収の法社会学的考察」『漁業経済研究』第38巻第1号、1993年6月


【12】
漁協とダイビング業者間に現に結ばれた協定は、漁協寄りのダイビング組織、宮古島ダイビングリゾート協会(協会)とのものだけである。この組織は、1〜2社程度と最大組織である宮古島ダイビング事業組合(事業組合)とは比較にならぬほど加盟業者はすくない。

平成8年7月18日付けで、協会と宮古地区連合漁業権管理委員会(管理委員会)との間で締結された「宮古島漁業観光共用環境管理協定」については、事業組合側は支払金の名目、金額、漁協側の実施する事業内容の明確化など、調整がつかない状況にある。

ダイビング側からすれば、全県的なモデルになることなど今後に向けての不安、又は懸念される材料が多すぎるということであろう。


【13】
具体的な支払い例としては、潮干狩についての水産庁の見解がある。(水産庁監修『最新漁業制度重要例規集』大成出版社、1979、452〜453ページ)

水産庁は「潮干狩りで非漁民が第1種共同漁業権の内容たる貝類を採捕する場合、漁業権者たる漁業協同組合が料金を徴収することについては、その徴収の根拠が非漁民による漁業権侵害に対する受忍料という性格のものであり、かつ、その徴収金額が適正なものである限りにおいて、徴収名目の如何にかかわらず差し支えないものと解する。」という回答をしている。

どちらにしても、被害が事前であれ事後であれ明確である場合が原則であろうし、事例を積み重ねて客観的な基準づくりをする方法しか対策はないであろう。


【14】
サメによる犠牲者が出たことを理由として、ダイビング業者を対象とする広告が新聞に掲載された。広告の全文は、表−1に載せてある。
【15】
ダイビング業者との「協定」とは、注12)のものである。漁協にとっては 、組合員全員が知るべきものであるから、「総会決議」にはなるが、原則の扱いは「一般決議」というものになるという。
【16】
注12)の協定を締結するに当たって、その取り扱いを明記したものである。外交文書でいう、付属文書のような性格を持たされているようだが、協定に応じないダイビング業者(つまり事業組合側)に対して、差別的な取り扱いや実力行使を言明している点など、問題の多い「行動指針」である。

行動指針IIとは、「上記以外(注、シーワールド株式会社、いらぶマリンショップの2社)の非協力ダイビング業者および敵対ダイビング業者に対しては、3漁協は協力する意志ははなく、特に共同漁業権内での実施漁場に於いては、漁業妨害者として排除することをここに明記する。」と記されている。

この文書の責任者が、漁業権管理委員会の名前でありながら、代表の長崎毅名義でなく、(伊良部漁協長)奥原組合長とあるのも不思議な、疑問とすべき点である。


【17】
徴収の根拠については、表−2の伊豆半島の事例をみても、現時点では画一的な方式はないといえよう。裁判所の判例または各県の事例等、積み上げながら方式をお互いが作っていくしかないと考える。
【18】
「海区漁業調整委員会」や「海面利用協議会」など、制度に則った機関が設置されている。しかし、その実態はこのようなトラブルをスピィーディに解決する実態にはない。制度を裏付ける予算や人員配置等、具体的な欠陥をただす行動が水産関係者に不足しているということであろう。知事命令など具体的な法的強制が可能であり、機能すれば大きな力を持つといえよう。
【19】
具体的な交渉を展開する場合、双方が認める「権威者」が必要である。その役割を裁判所がするのか、海面利用協議会になるのか、早急に方針を立てるべきであろう。 当事者、特に漁協側に冷静さを望みたい。
【20】
水産業と海洋性レクリェーションの関係については、関係各所より報告書・論文等が発行されている。下記の資料を、例としてあげてみたい。

(1)大野裕夫『マリンリゾート開発への提案』成山堂書房、昭和63年
(2)千葉県漁業協同組合連合会『千葉県沿岸域リゾート開発に対する漁協系統の対応に関する報告書』平成2年
(3)沖縄県『リゾートと水産業との調和・共存方策等に関する調査』平成4年
(4)全国漁業協同組合連合会『海洋性レクリェーション タイプ別対策指針作成事業現地調査報告書』平成5年
(5)田中 正「漁業振興と観光開発計画、三重県長島町の事例」『漁業経済研究』第18巻第3号、1970、56〜60ページ
(6)佐野雅昭「遊漁案内業の展開と漁村の対応」『漁業経済研究』第39巻第1号、1994、20〜44ページ
(7)小野征一郎「海洋レクリェーションと漁業」『漁業経済論集』第35巻第1号、1994、35〜51ページ
(8)上田不二夫「定置網漁業と漁協活性化事業、読谷村漁協の事例」『ていち』No88、日本定置漁業協会、平成7年、19〜34ページ


【21】
「地域漁業活性化計画」については、県内全部の漁協が策定している状況になく、県内でも有数の漁協が計画もなく運営している状況がみられるのは遺憾である。本来ならば、計画のない漁協には水産予算は支給しないといった強い姿勢も必要だと思う。また計画は立てたが、継続して続けることが大事であり、続けきれない事業実施体制の弱い漁協もある。計画には市町村の水産係との連携は不可欠である。市町村の応援が得られるかどうかも、この計画の成否に大きく関係する。
【22】
具体的な「対策指針」というものはなく、それを処理できる専門機関もない。その面からは、行政、団体共に取り組みの立ち遅れが指摘できよう。当面は、話合いの場づくりに努め、トラブルを事前に予防することに努力を払うべきといえようか?
【23】
水産業の複合化については、以前より「水産ピラミッド」「水産ロケット」といった表現で、述べてきた。近年は、農協中央会といった農業団体でも同様な複合化について、大きく取り上げている。下記に、関連する文献をあげる。

(1)上田不二夫「水産業と水産教育<産業学のあけぼの)」『水産教育』第7号、沖縄県水産教育研究会、昭和56年、21〜31ページ
(2)上田不二夫「21世紀の水産高校像、水産高校から海洋高校へ」『水産教育』第7号、沖縄県水産教育研究会、昭和63年、9〜45ページ
(3)竹中久二雄 他『地域産業の振興と経済<農・工・商複合化政策>』筑波書房、1995

*複合化の基礎理論になる文献には、下記のものがある。

(4)岸根卓郎『食料産業システムの設計』東洋経済新報社、昭和47年
(5)黒沢一清『産業学エッセイ集』八千代出版、昭和49年
(6)黒沢一清『理論産業学』時潮社、昭和51年